97年度 府大会合評会(1)

97年度、府大会の合評会は、12月17日(水)に追手門学院大手前高校で 開かれました。以下はそのまとめです。府大会出場校12校のうち、このページには、金蘭会、狭山、港南、プール学院、鶴見商業の5校のデータがあります。 残りの7校、枚方、三国丘、箕面、追手門学院大手前、追手門学院、大阪成蹊女子、四天王寺のデータは、次の(2)のページにあります。そちらを見てください。

'97府大会合評会(2)


(1)金蘭会高校 MIYOKO MY  LOVE

 1、<脚本について>

例年に比べて、台本の意図する所が、くみとりやすかった。毎年、台本の台詞が綺麗にまとまっていて、読むだけでも芝居の情景が目に浮かんでくるといった本で、やりがいがあったと思います。芝居の中で、萩原朔太郎の詩が使われていましたが、台本との内容にも深く関わっていて、本番の後には、萩原朔太郎に興味がわいたと言ってる人も少し見かけられました。解りにくかったという点では「少年の存在」や、オトコが、最後に生きようと思ったきっかけ」等があげられていました。
 2、<演技・演出について>

いつも感心させられる統一された無駄のない演技は、今年も健在で、一言でいうなら、「すごい!」の一言だと思います。芝居の中での生の歌は、強弱のメリハリがきっちりとして聞きやすかった。主要なキャストの個性がハツキリとしていて、見ている客の印象に残りやすく、見やすかった。又、舞台転換を歌でつなぎ、自然に場面が展開していって、客の気持をつかまえ、途切れさせなかった細かい演出には、圧倒されました。
 気になった点であげられていた事は、「台詞の少ない人達の個性があまりなく、目立たない。」「役者が台詞を言う時の姿勢が、猫背になる時がある。」等が、ありました。
3、<照明・音響について>

 照明は、かなり「きっかけ」が多かったのにもかかわらず、綺麗にこなしていた。舞台上の照明も、場面場面の雰囲気にあっていて、のめり込みやすかった。
 音響も、いい曲ばかりで、台詞がある時には、台詞の邪魔をせず、無いときには大きくといった様な、丁度いい音量で、芝居作りをかなり手助けしていた。
4、<美術について>

 一番印象に残っているのが、大量の「竹」と、それについている多数の「生首」。どれもこれも本物の様な出来で、驚いた。舞台中央の黒板も、かなり大きく目を引く。井戸の岩肌や、竹の色合いが絶妙で、素晴らしい舞台装置でした。

5、<全体を通して>

金蘭会の芝居には、「パワー」がある。いつも、お客さんを魅了し、引き込む何かがある。これは、演技、演出、照明、音響、舞台技術、どれをとってもいえる事だと思います。だから、これだけ完成度の高い芝居になり、客を毎回、あっと驚かす。それは、日頃の練習量の多さと、部員の人達のテキパキとした動き等にあらわれていると思います。 本番では、最後の最後まで、客を放さないで完全に、金蘭会の世界が作られていて、 驚かされてばかりの舞台で、色々と思う所があり、何かと考えさせられる芝居でした。 これからも頑張って下さい。
金蘭会高校の皆さんお疲れさまでした。

 

(2)狭山高校「lNNOCENCE

  1、く脚本について>

 高校生の創作ということで価値観が近くて親しみやすかった。場面設定なども情景が

つかみやすい。この脚本は何度も何度も読みたくなる。一度読むとなんだか気になりもう

一度読んでしまう。そんな感じがした。

 この脚本の特徴ともいえるのがユタカの長ゼリフだろう。少々説明くさかったかもしれ

ないがユーモアをいれつつ伝えたいことをしっかりと書いている,すごいと思った。

 そして話言葉をセリフにするのがすごく上手だからテンポもすごくいい,だが場面の

展開がありそうであまりなく山場がどこにくるともなく終わっていた気がする。

しかし,今高校生の私たちが思っている仲間や別れ、これから進んで行く道のこととか,なにげなさにすごくここちよさを感じるいい本だと思う。

2、く演技・演出について>

脚本の卜書以上にキャストの演技はすごくおもしろい。言葉がはっきり大きくちょうど

よい速さで聞こえていたのでよけいおもしろかったのかもしれないが。ストッピングは

よかったがマイムが未熟でなにをしているのかわかりづらいところがあった。

小ネタなどはあいまいにせずおもいっきりやっていてあのアイデアは どこからおも

いついたんだろうと思うほどおもしろい。

キャストの個性についてだが全体的に出し切れてなかったように思う。見ていて個性が

つたわってこないセリフがあるからこの人はこういう人なのかとなんとかわかるのだが

ものたりなかった。そして月日の変化を脚本がうまく書いているのだから,その変化をもう少し演技の方でもそれを見せてほしかった。サスのつかった演技は大げさで日常の普通

の場面を見ているような演技は見ていて大変すがすがしかった。

最後の場面はよくある態しをあえてやっていてかえって新鮮になっていた。

  3、<照明・音響について>

照明は今まで,あまり見たことのないおもしろいサス・ピンの使い方をしていた。

しかし あまり活用していず、場面によっては,ホリ以外にも色をつけてもよかったのではないだろうか。ただしこの話には色をあまり使わなかったのは正解だったと思うが,

全体にセピアっぽく脚本の感じをこわしていなくてよかった。

音は あまり印象的なのはなかったが、タイミングあわせなどは上手だった。

やはり“Let it be”はこの話のカギとなる音なのですごく効果的に使われていた。

ラジオ局の時などはもっと音をあげてもよかったと思う。

 4、く美術について>

一見,少々寂しい感じがするが実は話にすごくあっていた。階段が特に良く古びた

感じにさせているだけで店内が地下にあるということが伝わってくる。しかし,カウンターやうしろのパネル,イス,テーブルはただぬっただけとなっていた様に思う。階段の様なヌリ方にするか,店ということで,店らしくするか工夫がもうすこしほしかった。パネルの型は,地図の工場のマークの様でおもしろくカウンターにはってある写真やらポスターやらは,店内にも見えおしゃれだしラジオ局にも見えよかった。

イスとテーブルはラジオ局と店内,両方のものとして使っているが,どうかんがえても店内に見えてしまった。全体のおき位置は広い舞台をうまく使っていたと思う。

5、く全体を通して>

見れば見るほど味のでるそんな舞台だった。

はじめから終わりまで,うまくまとまっていて,客が何をしてもらえれば楽しめるか,というのをよくわかっていたと思う。おどろいたりワクワクしたりハラハラしたりする所がほとんどなく刺激の弱い芝居だったが,自分たちの好きなことをしているというのがすごく伝わってきた。今だからできる,今しかできないことをやるって感じがした。

キャストの衣装はみんないかにもって感じで違和感なく,タケシのゲタなどは舞台の

アクセントになっていたのではと思うほどあっていた。高校生らしく今のアイドルの話

題をあげたりしていたのもよかったと思う。とにかくすごく好き嫌いのはっきりしてし

まう舞台だったかもしれないが,近畿に住んでいる今の高校生ならばほとんどの人がうけ

いれることのできる劇だと思う。いや,地域や年齢に関係なく受け入れることができる

劇なのかもしれない。

 

(3)港南高校 [童話裁判]

1、<脚本について>

*既成脚本という所にとらわれず、自分たちなりにアレンジしている所が面白く、目

 を引いた。

*面白い脚本だと感じられるのだけれど、最終的には何を伝えようとしていたのか、

 表し方の表現がただ脚本をなぞったとしか受け取れなかった。

2、<演技、演出について>

3人のヒロインの個性が薄く、3人とも同じように見える。台詞まわしなど、「お

 姫様」をイメージしている分、型にはまり、感情が見えにくくなっている。

3人のヒロインの立ち姿が気になった。姿勢が悪かったり、「お姫様」という設定

 にもかかわらず、足を開いて立っていたり。細かいことだが、大切にしなくてはな

 らない所への気配りがもう一つ欲しい。

*父(男)の表現が苦しい。「男はそんな動きはしないんじぁ‥・・」という所が

 ちらほらと見える。

*絵本販売員は前半ギャク、ネタはテンポも良く歯切れがあったが、後半になってく

 ると影が薄くなってしまっていた。

まとめるとすれば、3人のヒロインの特徴、まとまりがあれば、全体的にもう少し

しまった感じになっていたのでは、となった。

3、<照明・音響について>

*遊び心を出しても許される感じの芝居なのだから、照明に関してはもう少し変化

 をいれても良かったのではないか。

照明にしていれば芝居のメリハリがもっときいていたのでは、と感じられた。

大変、楽しかった。

4、<美術について>

*”家”という感じがしない。たしかにあまりこってしまうと、パネルを使うなどで

 邪魔になってしまうかもしれないが、もう少し現実感を出したはうが良かった。

*赤ちゃんの誕生を心待ちにした部屋の設定なので、ぬいぐるみや、オムツがあるの

 は良いが実際はそれだけじゃないだろう、との意見が多かった。たしかに実生活を

 追ったお芝居ではないが、服や、その他の細かいものなどを置くなど細かい気配

 りが欲しいと出ていた。しかし、全体的なメルヘンチックな雰囲気にはとてもあっ

 ていた。

*後ろの壁を使っての空間作りは良く、絵も上手かった。

5、<全体を通して>

*個人のキャラクターがもっと濃ければ、また別の仕上がりを持った芝居になったの

 では、と感じれた。

*全体的のテンポUPが欲しい。でなければ台本全体、芝居の雰囲気として、まと

 まりがなくなってしまう。

*「どう演技すれば、一番伝わるか」役者はこれを意識し、役の個性を考え、深めて

  いって欲しいと思われた。

 

(4)プール学院高校 「夏 の 訪 問 者」

  〜BLOWING IN THE WIND〜

1.脚本

 実際にあった話を上手く取り入れて使っていたのがよかった。戦争の話だから重くて暗いんじゃないかと思ったけれど、そんな風でもなく、現代の家庭が舞台になっていて、ボランティアの話や学校の話、不思議な出来事などがさらっと出てきて淡々と進行しているところがよかった。

プール学院の古い資料からいくつかの事例を引用して使っていたそうで、なるほど学徒動員の話など読み上げているだけでもリアリティがあっよかった。

 姉の初恵さんがカウンセラーに相談するシーンがあったが、ボランティア活動と「乱暴された」ことのつながりがよくわからなかった。「奉仕」という善意の仕事をしていながらそういうことをされたという、現代の修羅場を描きたかったのだろうか。だとすれば、姉の悩みは「現代を生きることへの絶望」……?。でも「思い出すのも忌まわしく」だから「死にたい」という説明では、現代っぽくないのでは(現代でも実際にはそうなのかもしれないが…)。そういった初恵さんの「絶望」の部分をもっと掘り下げて表現してもらいたかった。

逆に、あまりはっきりした理由をつけないほうがいいのではと思ったのが理香子の不登校である。「母親の不倫」が(それがすべてではないにしても)理由として提示されてしまうと、解決可能な底の浅い不登校に思えてしまう。家庭訪問で訪れた先生の「本音」のグチも「会社勤めのサラリーマンのグチ」のようにしか聞こえなかったので、もっと現代ならではの「やるせない人々」を表現するための台詞の工夫がほしかった。そうすることで、孝子さんの時代と現代がそれぞれ「生きた時代」として浮かび上がってきたのでは。

2.演技・演出

 孝子さんの力まない演技がさわやかでよかった。友行役の子が本当の男の子に見えた。全体的にどの役の子も力まない自然な演技でこの芝居の雰囲気にあっていたが、その代わりに声が小さくて聞き取りにくいところがいくつかあった。もう少しポーンとはじける人がいたらよかった。宏美の元気さがすごくナチュラルで、生き生きした感じが芝居をひきしめていてた。お母さんのとぼけた感じもよかった。

3.照明・音響

 ホリゾント幕にスライドを映したのが効果的だったと思う。きれいに映っていた。(リハーサルで手作りのスクリーンを持ち込んでいたが、ホリで正解だったと思う。)途中で暗転幕を使った転換があったが、暗転幕は時間がかかるので、あの場合、照明の工夫で場面が作れたのでは。

音響のトラブルかミスか、レベルが極端に大きかったり小さかったところが何カ所かあって台詞が聞き取れなかった(ラジオの音など)。全体的に、もう少しBGMのような

音楽を挿入してもよかったのでは。

4.美術

 細かい小道具(CDラジカセ、雑誌、観葉植物、電話など)がいろいろ出てきて楽しめてよかった。2階にあがる階段は、見た目は綺麗にできていたが、ビールケースに段ボールをはりつけて置いただけだったので、安全面で不安なものがあった。背面の大きな壁も、細い角材の枠に段ボールをはって作っていた。それをリハーサルのセッティングで見てたので、酔っぱらった先生が階段を上がって柱にもたれかかりそうになったとき、すごくひやっとした。段ボールの活用は便利かもしれないが、その分危険性が大きい。(段ボールは補強をすることが難しいので、あまり大きな道具には向かないと思う。)

舞台が広い感じがした。もう少し狭めて道具を立ててもよかったのでは。

 メイク、衣装などはそれぞれが自然な感じがしてよかった。

5.全体

 台詞の間が少々重く、最初から最後まで同じ調子で淡々と進行していったような気がする(いい意味でも悪い意味でも)。さらっと流すような感覚で作ってあったところにすごく好感を持った。内容的には、孝子という異質の人間(幽霊)の作り方が今ひとつ浅く思えた。現代の人間と違うということを「礼儀正しい」とか「おっとりしている(テンポがずれている)」というところで表現していたが、もう少し何かがあったらと思う。

 肩を張って作っていないところがよかったが、現代的な問題(不倫、不登校、震災など、ある意味では現代の戦争)と孝子さんの時代の悲惨な戦争をそれぞれもっと浮き上がらせ、初恵さんの「生きていこう」という思いにつなげていってほしかったという気もする。

初めに孝子さんが出てくるときのカーテンの揺らぎがすごく感じがでてていた。タイトルともあっていて、一番印象に残るシーンだった。

 初恋の人と孝子さんは、その後どうなったのだろう。すごく気になる。

 

(5)鶴見商業高校 「調べはアマリリス」

 1.脚本

 最近問題になっている高齢化社会、医療問題、家族のあり方などをとりあげた脚本だった。おばあちゃんをひきとらなくてはならなくなった家庭で、まず家族間のリアリティのある会話があり、次に訪問販売のセールスマンによるカリカチュア的な場面があり、そして「おばあちゃんの問題」を自分のものとしてとらえていく変化をパントマイム的な動きで表現する場面があり……と、いろんなアプローチでストーリーを進行させているので、重くなりがちなテーマを見やすくバランスよく組み立てていると思う。

 気になるのは、脚本の初めから、寝たきりの老人に対する人々の考え方をあからさまに「やっかいなモノ」にしてしまったことである。全体を通しても、それをストレートに出しすぎではないかという印象を受けた。セールスマンの説明も機械的な匂いが強く、思わず「モノ」扱いするところに意外性が出てきていない。むしろ過剰に慇懃な態度で「善意」の仮面をかぶったセールスマンの方がインパクトがあったのではないだろうか。(台詞の内容はおもしろく、大変勉強になった)

 病院での老人の扱い方も、冷たさが前面に出ていて、「特別な病院」でのできごとのように感じてしまう。(しかしその冷たさがあるから、後の美月が老人になる場面が効果的に表現できていたという気もする)。

 美月がおばあちゃんの世話をしようと決心する過程を、「世間一般の老人に対する冷たさ」だけでなく、美月のおばあちゃんへの思いとうまく絡ませてくれたら良かったのにと思う。美月とおばあちゃんの具体的なエピソードをもっと入れて、そのあたりをもう少し掘り下げて欲しかった。

2.演技・演出

美月が老人に変わるところや、変わってからの動き(パントマイム)がすごくそれらしくてよかった。セールスマンの台詞が間のびしている感じがして、長い台詞を聞かせきっていなかった。テンポも一定だったので、もっと変化させて、セールスマンらしい話術とパーソナリティを見せて欲しかった。また、家庭内の会話では、お父さんの台詞を言う

タイミングにもっと緩急をつけたらシーンが活気づくのにと思った。

病院の医師たちの演技は、厳しい内容の話を淡々と話すところが、世間を騒がせた

某病院を彷彿とさせリアリティがあった。

3.照明・音響

 美月が老人になるところでの照明の切り替えが自然で、色も綺麗に出ていた。サスが強調されるべきところで使われていて効果的だった。

 音響も、入るタイミングや音量など、とてもうまく出来上がっていたように思う。よかった。

4.美術

 舞台の空間をうまく使ってパネルが立っており、いろんなところから出入りできる構造になっていた。シンプルで、壁の色など変化があって綺麗に出来ていた。

 おたすけ丸君一号の模型には感動した。ちゃんと説明通りに動くように作ってあってびっくりした。一人で登場人物を何役もやる構造になっていたので、衣装だけでなく、違った人物である工夫がもう少し(メイクとかで)欲しかった。

5.全体

 音響・照明・美術などの点はうまく仕上がっていたと思った。脚本の中の台詞も随所で笑えるところがあって、バランスがとれていて楽しめた。しかし、脚本で読むとおもしろいのに役者の演技がそれをいかしていないのではと感じたところもいくつかあった。もう少しのびのびとした演技だったら良かったのにと思う。

登場人物の心情的な表現が薄いような気がした。特に、最後に美月がなぜおばあちゃんの世話をすることになったのか、何がそうさせたのか、「なぜ、何が」の部分が弱かったように思う。

タイトルにもなっている「アマリリス」のエピソードをもっと詳しく聞きたかった。同じように歌ってもらった妹と美月でそのことについて会話するとか、回想シーンを挿入するとか何か方法があったのでは。

 おばあちゃんの世話から、老人介護の専門家になるという決意まで台詞一つで一足飛びにいってしまったのも安易な感じがした。そこまでいくのなら、セールスマンや病院の人たちの働く姿や面接試験のやりとりが美月にどう影響を与えたか、それまでの美月の「就職」に対する考え方はどうだったかを何かの形で示しておくべきだったように思う。

しかし、TVや新聞で最近よく取り上げられている「高齢化社会問題」に対して、まだまだ若い(?)私たちは、それをどこか他人事のように思ってしまってるところがある。それがこの舞台を見て、身近に感じ、考えさせてもらった気がする。

 

 

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