97年度 府大会合評会(2)

97年度、府大会の合評会は、12月17日(水)に追手門学院大手前高校で 開かれました。以下はそのまとめです。府大会出場校12校のうち、(1)のページには、金蘭会、狭山、港南、プール学院、鶴見商業の5校のデータがあります。 この(2)のページには残りの7校、枚方、三国丘、箕面、追手門学院大手前、追手門学院、大阪成蹊女子、四天王寺のデータがあります。

'97府大会合評会(1)


 枚方高校「汚れちまった悲しみに‥‥〜Nへの手紙」

(6)枚方高校「汚れちまった悲しみに‥‥〜Nへの手紙」

1、<脚本について>

 やはり、年代の違いのせいだろうか。多くの観客達には、「難しい内容」として受けとめられていたように感じる。しかし、この台本を1時間にまとめあげるのには、内容の理解と、十分な読解力が必要とされる。講評にも挙げられていたように、その力は大変すごいとの意見がだされた。

友情、人間という生き物の汚さなど、色々なことが折り込まれており、それら全てが各個人の

性格、感情となって表されているのが素晴らしい。

 既成作品をやるにあたって、ありがちな役者が役にはまりきっていないと感じられる面

が少なかった。

2、<演技、演出について>

 特に目についてしまったのが、役者の表現力の違いである。主要の役をやる人達の

感情の入れ方、演技力が高度であればあるほど、その他の役をやる役者(1年生など)が

浮いてしまっているように見える。芝居全体の完成度が高いだけに、見ている側としては

少し辛い、という意見が出た。

 他に挙げられたものとしては、

*誰が誰なのか解りづらく、話が混乱した。

  • 酔っ払いのシーンなど雰囲気、演技などはよいが、何を話しているのか解りづらい。
  • 初めて見る客としては、どうしても台詞を追って話を理解する。その点において、もっと

      聞かして欲しかった。

    *感情がこもっている。見せ方が上手い。などが挙げられている。

    3、<照明・音響について>

    *木のところの照明がきれい。照明によって役者、場面の雰囲気を十分に盛りあげ

      られている。

    *木を浮かびあがらせるために、もう一工夫が欲しい。角度によっては一枚の”紙”

      に見えてしまっていた。

    *雷の音、光のタイミングがきちんとあっていたため、迫力がある。

    *音響は大体あっていたが、パッとするものがなかった。もう少し、ラストの曲のよ

     うな印象に残る選択が欲しい。

    4、<美術について>

    *”木”の事が一番にあげられた。照明の当たり具合によっては本物にさえ見え、

      大変美しい。

    *部屋の区切りとして立てられていた棒が、意味はわかるのだが何なのかいまいち

      解りにくい。

  • 場面ごとに出てくる道具が色々あり良かった。芝居の中の基本、細かい所にまで気が
  • 配れている。   .

    *衣装、小道具は時代を感じさせ、現実感があふれておりよかった。

    5、<全体を通して>

    *全体のまとまりがもう少し欲しく感じられた。難しい話だけに、難しい話の所でテンポを落とされてしまうと辛い。

    *演技は個性が出ており、話に飲み込まれることなく出来ていた。

  • 感情の起伏によって場面の盛りあがりなどは出せているが、全体的に見ると場ごとのメリハリ
  • が欲しい。しかし、脚本の表し方、見せ方などレベルが高いと感じられた。

     

    (7)三国丘高校  「JOKER」

    1、<脚本について>

    ・死をモチーフに一つの世界を創りあげています。

    ・感情のあるものを不良品と呼ぶその響きがいいです。

  • 皆が知っている遊びをうまく取り入れていて、難しい題材をトランプという身近なもので見て
  • いる方に身近に感じさせてくれます。しかし、JOKERという言葉を無理にこじつけようとして

    いるような気がしました。もう少しJOKERについて書き込んだ方が良かったのではないかと

    思います。

    ・客に先を読まれないセリフの運びが良かったです。(ヘレンとか)

  • タナカの最初のセリフが現実的であるのに、後の話が空想的だったので台本全体で統一した
  • 方が良かったのではないかと思います。

  • 「感情」という設定が曖昧のように思えます。この台本では「感情」はタナカのセリフで「情け」
  • の意味にとれますが、どちらかというと、判断基準が反抗的な感情のあるなしで判断されて

    いるようにとれました。

  • アンディの「光輝くJOKER達へ」という言葉が大切にされていないように思えましたが、最後
  • の「全ての光あるジョーカ一達へ」というセリフが逆に浮き出ておもしろかったです。

    ・ポーカーのルールについてもう少し説明をしても良かったと思います。

    ・ヘレンの気持ちが変わるところは、もう少し言葉で表した方がよりよかったように思います。

  • 最後にはやはり感動のある作品に仕上げてあったので、とても後味のよい話でしたし、見て
  • いて心に残る何かがありました。

     2、<演技・演出について>

  • モリスの感情の出し方が、不思議な感じでしたが、その独特な口調こ温かみを感じました。
  • ただ、収容所に入る前の設定をもっとかもしだしてもよかったと思います。

  • タナカは、もう少し感情をつければなお良かったと思います。タナカとモリスは、役作りがしっ
  • かりできていて、存在感があったと思います。

    ・マリンはセリフの言い方にクセがあり、一部聞き取りにくかったように思います。

    また、普通の表情が少なかったように感じました。が、暗い雰囲気の中で明るかったの

    で、とても自然に受けとめることができました。

  • ヘレンは、間の取り方が素晴らしかったです。ただ、ヒステリーを起こしていても、どこか落ち
  • 着いている感じだったので、もう少し狂うところはもっと狂っても良かったように思いました。

  • アンディは最初から乗っていったらよかったです。しかし、一人一人の全く独立した個性の中
  • で「普通の人」も個性なのがよく分かっていい感じでした。

  • 演出ですが、最初から見入れて良かったので、最後の終わり方をもっと迫力を出していたら、

    より印象的になったと思います。

     3、<照明・音響について>

      音響においては、最低限の利用でかえって効果的だったが、あげるところはもっとあげ

    てもいいのでは?と思ったが、演技をこわすことなく使っていたと思う。

      照明は、色が少なかったのが、案外よかった。 しかし、最初のシーンとか人が座って

    ピンだったが、立ってピンとか、うしろを真っ暗でなくてもうちょっと考えたほうがより印象が

    あったかもしれない。最後も何か印象が、足りない気がした。4人が死んでからのピンは、

    いかにもありきたりなカンジがして,もったいないような気がした。

     4、<美術について>

      ケコミ等、何も使わないところはよかった(閉じ込められたカンジがすごく出ていた)

    かもしれないが、自分たちでつくったものとわかってしまうので、せっかく違う世界を作

    っているのに、それを見ると一気に現実の世界に戻ってしまい、さめてしまう。ここが、

    惜しいところだった。でも、全体的にあの雰囲気はよかったと思う。

     しかし、pointにもなる"JOKER”の文字は、赤色はいいけれど、字体をもうちょっと考えた方

    が良かったのでは? すごくコミカルでマンガチックで、これもまた舞台の雰囲気と違い、さめ

    てしまう。

    手の甲に、製造番号を書くのは、細かすぎて誰も分からなかっただろう。

     5、<全体を通して>

      衣装のことだが、全員”白”というのほ、正解だったと思う。5人の演技が強すぎると

    いうくらい強いので、バラバラにしてしまうと見ていてつらかっただろう。

      メイクはもっとnaturalでよいと思う。

      とにかく、全体的に時間を感じさせない芝居だった。個性のことだが、やはり強ぎたので

    は?なんとなく見ていて「こいつはこういう奴」みたいなくらいで、よかったのかもしれない。

      けれど、みんなすごく声がでかく、がなってるわけでもない。それがかなりよかった。

    見ていて疲れないのは、そのせいかもしれない。

      しかし、人からどんな話だったかと聞かれると、おさえるべきpointが多い話だった。

    難しいテーマに、よくぞここまで取り込めたと、すごく尊敬してしまう。60分という短い時間に、

    よくまとめていると思う。 始めがあって、中盤があって、終わりがある。

      CASTが、一年が大体で、本を書いているのも二年ということで、きっとこれから、すご

    く上手になる人達だと思われる。

     

    (8)箕面高校「ライフレッスン」

    1、<脚本について>

     最初読んだ第一印象は‘難しい”でした。演出のつけ方、演じ方、装置が。内容も、

    一度読んだだけでは、一人一人の感情がつかめませんでした。そんな台本をしっかり読み

    深め、かみくだき意味を理解して演じることはすごく難しかったと思います。倉庫での

    淡々とした中で、いろいろ事件が起こるわけですが、元の脚本を短く一時間用にしたので

    しょうが、話の展開が速く少し無理があったように思います。自分が必要とされていない

    のではないかとか、少年の何でも自分のせいにしてしまうという気持ちはなんとなく分か

    りました。しかしそれに対する周囲の反応など難しくあまり伝わってきませんでした。

    でもおもしろい台本だと思いました。

    2、<演技・演出について>

    ・箕面高校の演劇部の『ライフレッスン』には雰囲気と空気がありました。

    人物や装置だけでなく、空気も演出されていたように思います。そういう面で舞台全体

     が一つにまとまっていたし、見ていて好感がもてました。

    ・全員声がとおっていて、セリフが聞き取りやすかったです。

    ・少年や少女の年齢が変わっていっておじいちゃんやおばあちゃんになる時、セリフがな

     くても動きだけですぐ分かりました。

    ・少女の印象が薄かったと思います。無理なく動けていて、イキイキしていて良かったの

    ですが、印象にあまり残っていません。

    ・先生が衣装のせいか迫力がありました。

    ・皆様、特に子供達ですが、服の裾を持つ癖があるので手の動きが中途半端で、不安そう

    というか緊張しているのが伝わってきました。

    ・少年の「僕続けてる!」のサスのところで、サスが消えきっていないのに素に戻って去っ

    ていってしまったのがもったいなかったです。サスが消え切るまで演技した方がもっと

    印象を残せたと思います。

    3、<照明・音響について>

    照明…オープニングの光はこのお芝居の総称の様で非常に良かったです。はとんどカラー

      を使ってないけど、それがかえって、ガレージというイメージがわいた。でも全体

      的に暗くて、下を向く、うなだれる演技が多かったせいもあるけど、表情が見えに

      くくもったいなかったです。

    音響…芝居にあった曲を探すのがうまいと感動しました。フランス語の曲が3回くらい使

       われていて、その場その場で違う意味の事を表し、非常に効果的だったように思い

       ます。音が大きすぎる所が何箇所かありました。リハを見させていただいたのです

       が、演出の方が舞台の下手柚からみていらしゃったので、やはり客席から、客の目、

       客の耳で見て聞いてみるべきだったと思いました。

    4、<美術について>

    装置…脚本にガレージと書いてあったのでガレージと分かりましたが、多分、お客さん

       にはあまりガレージということは伝わっていないと思いますし、そもそも、ガレ

       ージでないといけないということはないと思います。ダンボールやホースなどが

       新しくきれいだったのが気になりました。ただ買っていろいろ置いたという感じ

       を受けました。きっと考えて配置したと思いますが、たまにダンボールが動きの

       妨げになっていた様に思います。

    衣装…先生の衣装はウサギをふところから出せておもしろかったです。父は暗い照明の

       中で黒い服だったので、少しダークな存在のように感じました。少女はもっと少

       女っぽい衣装の方が良かったのではないかと思います。脚本を読みへその緒を期

       待していましたが、普通の細いヒモだったのでがっかりしました。小道具は少し

       大袈裟な方が客席から見たらすごく細かかったです。

    5、<全体を通して>

    全体的に1時間がとても早かったです。幕が開いた時から、音響、照明、役者の空気が一

    致していて、本当に良かったと思います。常にハラハラさせるわけでもなく、淡々と、ゆっ

    くり、ゆったりと話は進むのですが、それを退屈させずに観せたという所は感心しました。

    しかし、何を伝えたいのかがハッキリしなく、伝えるべきことが伝わってきませんでした。

    役者さん、全体的にいい動きだし、表情、声も良かったですが、内面的なモノがあんまり

    伝わってきませんでした。形式的な表情、声だったように思います。ここでこうするとい

    うのはあらかじめ決めるべきだけど、その動きに定着しすぎで、少し慣れが生じていたよ

    うに感じました。

     

    (9)追手門学院大手前高校  「プールサイドで英単語」

     1、<脚本について>

        顧問創作という事で、話にまとまりがあり、とても、見やすかった。題名と台本の場面とが

    合っていて、情景が浮かびやすく、日常的な空間の中で話が展開していき、解りやすい。

       台本を読んでいる時に、「あ〜なるほど。」と、思うことがあって、芝居の流れや、雰囲気を感

    じる事ができる。高校生や先生の個性が、台本に割とはっきり書かれているので読みやすか

    った。気になる点で出たのは、「山場はあるけど、他は少し同じような、場面が続く。」等が出

    ました。

     2、<演技・演出について>

       各役者がのびのびと演技をしているなと思いました。「無理をして動いている。」という感じは

    しなくて、「一人でに体が動いている。」といったような、感じだった。

       演出面では、役者が割と上手に固まってしまう所が、何ヶ所かあって、舞台がもったいない

    という意見も出ましたが、先生役の人が、シヤチを持って出てくる所や、ボイスチェンジャーを

    使った「Aさん」のシーン等は、ユニークで、おもしろかったという人も、いました。

       気になった点としては、「役者の声が少し聞き取りにくい所が多少あった。」「後ろ向きに台詞

    を言ってしまう所があって顔が解らなかった。」というのがありました。

    3、<照明・音響について>

      照明については、台本の示す通り「夏」を感じさせるホリゾントの青が印象的な明るい照明で、 少なめのきっかけの中で、「先生」の登場で赤くなったりとメリハリがあってよかった。

      音響は、少し小さめに感じられた所があったが、芝居の雰囲気にあっていた。

    4、<美術について>

      プールサイドのイメージが一目で解る装置で、イスやテーブルが多くあったが、整理されてい

    て、邪魔に感じなく、整然としていた。下手の魚の絵が、カラフルに描かれていて、舞台上の

     物の中で目を引いた。

    5、<全体を通して>

      普段の日常生活の一場面を、自然にのびのびとやっていたのが一番印象に残っています。肩の力が抜けていて無理に作ろうとしているのではなく、本当の「そのままの自分」というので、やっていたのではないかと、思います。本番では、見ていたお客さんの反応もとても良く、いい

    舞台だったと思います。部員の方達もやってて楽しかったんじゃないかなとか、普段から、仲が良いんだろうなと思わせる、そんな暖かみのある芝居だったと思います。これからも碩張って下さい。    追手門学院大手前高校の皆さん、お疲れさまでした。

     

    (10)追手門学院高校 「鳥たちはもう帰らない」

      1.脚本

     構成力において大変優れた脚本であると思う。いいタイミングでギャグが入り、ここというタイミングで劇中劇に入る。「まだもっと見せてくれ」というところで必ず何か横ヤリが入り、「どうなるんだ、この先は」と観客を魅きつける。ストーリー展開というのはこうやってやるんだ、ということを見せつけてくれる脚本だった。

     大勢いる登場人物も少ないエピソードでそれぞれの特徴を示し、キャラクターをうまく立ちあげている。なおかつそれぞれの持つ問題点も適度に盛り込まれており、観客を飽きさせない。ただ、これだけ大勢いるとストーリーと絡みきれなかったキャラクターもいたのでは。

     先生が母親に手紙を書くという形で物語が進行していく。その部分は全体を通して見るとほっとできるシーンになっていて、それなりに効果的であったが、先生の心情が正直かつダイレクトに語られるより、語られない裏の感情が見え隠れするような内容にした方が、後半の、先生が母親に対して感じているうしろめたさにうまくつながったのでは。

     先生を「金八先生」のようなキャラクターにしていたが、現代では「金八先生」が「先生」としての一つのステロタイプになりつつあるように思える。生身の先生として描くとき、その点がマイナスになってはいなかっただろうか。

    2.演技・演出について

     登場人物が多い中で、それぞれのキャストがちゃんと立つ「立ち位置」を作っていたのに感心した。抜群のアンサンブルだった。

     幕間交流で「歌やダンスが不完全だった」というようなことを言っていたが、そうは見えなかった。うまかった。コーラスも上手だったし、ダンスもキマっていたように思う。何よりも迫力があった。特に2回目の泣きながら歌うシーンは、ものすごくインパクトがあり、感動的だった。

     物語を活気付ける、狂言回し的なキャラクターが何名かいたが、ストーリーが速いスピードで進行していく中で、ギャグの間合いがうまくとれていない(肩に力が入っている)ようなところが何か所かあったように思う。

     劇中で、音響・照明が客席側から「OKです」と叫ぶという演出は、意外性があっておもしろかった。

    3.照明・音響について

     照明:サスの使い方や切り換え方がうまく、場面場面で効果的だった。ホリの色がきれいで、特に天使の場面の淡いブルーなどは見せてくれる色だと思った。しかし、刺激的な明かりが多い分、練習場のシーンの明かりが地味で物足りなく思えた。

     音響:メジャーな曲を思い切って使っていたのが印象的だった。その曲の持つイメージは確かにシーンに合っていて、観客の心を揺さぶってくれた。しかし、メジャーであるがゆえに、観客が何かこだわりのようなものを持って聞いてしまう危険性もあったのでは。

    4.美術について

     一番ビックリしたのは、後ろにあった大きなレンガの壁が動いたことだった。あれだけ大きい物を滑らかに動かせるように作るのはすごいテクニックだと思う。機能的に有効で、しかもきれいに作られていることに感心した。ハシゴがきゃしゃな感じがした。(きれいに仕上げてはいたが)

    人がかけ登るとき、揺れた感じがして一瞬ひやっとしたが、あとでひょいと抜いてかついでいくのを見て、びっくりしたと同時に揺れた事も納得した。

     全般的に大道具がきれいに作られていて、迫力があった。

    5.全体を通して

     演劇という私たちにとって身近な出来事をテーマにした作品は高校演劇でよく見られるが、この作品はまさに今私たちが参加している大会直前の生徒や先生の心情を扱っており、観客が「身につまされる」部分もあり、共感を持って見ることができた。

     一人一人の演技が個性的でとてもよかった。全員が自分の役を把握していて、無駄な動きがなく、見ている者に安心感を与えてくれる。テンポもよく、各シーンが簡潔に整理され、すっきり仕上がっている。

     演劇をしていく上でいろいろな事が私たちにふりかかる。その中でどれだけ仲間が「思い」を持って一つになれるかという、私たちが日々思い悩んでいる問題を取り上げていたので大変身近に感じることができた。

     しかし、後半のヤマ場となる、コンクール出場辞退という「決意」に至る過程が今一つしっくりこなかった。それは幾つもの選択肢の一つに過ぎなかったわけで、「先生の立場」「クラブがどう思われるか」「連帯責任」という論議から、あまりにも性急に個人個人の価値観を「辞退」=「クラブ(仲間)のため」=「自分たちは仲間を大切に思っている」と染めあげてしまったように感じた。それによって、「辞退」がその場の感傷に流されて出された結論のような印象になってしまったのでは。それが普遍的な「美学」ではないことを醒めた目で見る視点もどこか(先生あるいは部員の誰か)に必要だったように思う。

    しかし脚本、演技、演出、音響、照明、美術どれをとっても「すごい」舞台で、エンターティメント性に富み、観客にとって安心して見られる劇だった。

     

    (11)大阪成蹊女子高校 「くれ竹のよよに聞こえかた糸の」

    1、<脚本について>

    初めて読んだ第一印象は難しいなぁということと、詳しいなということでした。こんな台本にどういうふうに演出をつけるんだろうかと思っていたのですが、語り部(紀君之)が話を進め、その間にスムーズに装置が移動してすごく見やすかったです。脚本に多くの歌が取り入れられているのも効果的でした。しかし、和歌や古文に慣れ親しむ機会の少ない現代人には分かりにくい所も多々あったと思います。特に、和歌の意味とたくさん出てくる登場人物です。和歌には何らかの説明を入れるなど工夫した方が、より効果的だったと思います。和歌も音響の一部になっていた気がします。きっと、脚本を持っていない人には難しく、分かりにくかったと思います。でも、その分は現代語と古文とのバランスのとれたギャグによってかけられた思います。農民の歌が印象深かったです。しかし、もっと古典のおもしろさ、また、歴史自身のおもしろさを伝えてほしかったです。今回の作品は歴史に忠実に作りすぎて無理がでたのではないでしょうか。本当に伝えたかったかった事は何だったのか良く分かりませんでした。確かに、勉強になり、知識も広がりました。その点では良いお芝居でした。

    2、<演技・演出について>

    まず全体的には、動きも大きく、無駄な動きがはとんど無くて、舞台を大きく有効的に使っていて見やすかったです。また、立ち位置をよく考えていて、そこへの移動する演技が自然で円滑に行われていたのが良かったです。声は良くでていたと思いますが、セリフの始めが激しすぎて、途中で声が小さくなり消えてしまっている所、または、叫びすぎてうるさい所がありました。あと、座った体勢での発声をもう少し練習した方が良かったと思います。

    和歌を詠む時の声がとても美しかったのですが、何を言っているのか分からなかったことが多かったです。ただでさえ親しみのない言葉なので、もう少し滑舌の面で気を配ってはしかったです。

    道真‥・動きもよく声も通っていて女の子だということを忘れさせるくらい男らしいりりしさがあり

    よかったです。

    君之…男役をするには少し声がキレイすぎたかもしれません。語り部は重要な役なのでもう少し

    声量が欲しかったです。そしてただの語り郎ではなく、紀貰之であるということをもう少し

    意識して欲しかったです。たくさんの長いセリフおつかれさまでした。

    御上の印象が薄く天皇のイメージとずれていたので少し凝問がわきました。代が変わっても同じ衣装の人が座っていて、移り変わりに気づかなかったです。衣装の色なりを工夫して欲しかったです。歴史モノで1時間中客を引き付けているためには、歴史のもつ難しさを上手に排除する

    ことだと思います。ギャグ以外にももう少し工夫してはしかったと思います。

    3、<照明・音響について>

    照明…様々な特殊な使い方をしていて楽しかったです。全体的にホリを青でまとめていた

       のがよかったです。パーライトがうまく使われていて感心しました。ピンをもう少

       し工夫した方が良かったように思います。貫之が変に浮いた存在になっていました。

       鬼のシーンの影だけが映るというのは大変有効でしたが、もう少し影をのばした方

       が効果的だったと思います。

    音響・・・雅楽の曲など、ぴったりの曲がたくさん流れ雰囲気作りに役立っていました。オー

       プニングの曲を無しにして、和歌の合唱で幕が開いた方がゾクッときたと思います。

       (個人的な意見ですが)BGM程度にするにはレベルが大きすぎる箇所があり、

    セリフが聞きとりにくかったです。

    4、<美術について>

    ドッシリしたものではなく、ゆらゆら、フワフワしたものでまとめたのは正解だと思います。すごく優雅で、美しかったです。3枚の布による場面軽換もスムーズで感心しました。

    布のゆらゆら移動する様子が平安の世の雰囲気をかもしだし、また舞台を円滑に進めたのだと思います。つりものにかかる照明の色が効果的でした。

    衣装は全員(主要メンバー以外)が白だったのが気になりました。誰が雉なのか区別がつ

    けれなかったし、名前も覚えることができなかったです。立烏帽子や冠はとても上手くで

    きていたと思います。

    5、<全体を通して>

    時代モノということで、セリフや衣装、装置など、とても苦労されたのだと痛感しました。

    舞台全体の流れがすごくスムーズで円滑でした。和歌など覚えにくい、また言い慣れてい

    ないような語句を覚えるということは非常に難しかったと思います。難しいというのは客

    にとっても共通で聞いただけでは分かりにくい事が多かったので、演じる側がはっきりと

    意味を理解し、一語一句、丁寧に言う必要があったと思います。あと、主要メンバー(紀、

    道真、御上、業平、高子‥・)以外の人達が衣装のせいもあってか、その他大勢という感じ

    がしてもったいない様な気がしました。キャスト全員を大事にしてあげてほしかったです。

    見終わってみて印象に残っているのは、ギャグと舞台装置だったと思います。話の内容よ

    りギャグの方が頭に残りました。何を伝えたいかというのがはっきりしなかったです。

    あと、ラストで道真は、”ずいずいずっころばし”をする必要はないと思います。ただ装置

    の真に立っているだけで美しかったと思います。でも全体的に皆さん本当に良く動かれて

    いて、美術、衣装も工夫されていたし、作品として完成度が高いと思います。一つの事を

    貫き、まっ直ぐであるということは難しいのですね。

     

    (12)四天王寺高校 「0120(119)6960」<>

    1.脚本

     もし、「クローン人間」が商業ベースで大量生産される世界になったら、という前提でかかれた物語だったが、まず、その世界を構築する段階でしっくりこないものを感じた。人造人間とクローン人間の大きな違いは、人造人間が個性を没した(あるいは作り上げられた)存在であるのに対して、クローン人間はDNAまで写し取った「コピー人間」であるという点が重要なはずである。だから臓器移植などの分野で需要が出てくるのはよくわかる。しかし一方で、遺伝子操作で簡単に拒絶反応問題がクリアされるという説明もあり、また一方では兵器用に大量生産という台詞もあり……こうなると、じゃあ、なぜ「クローン」なのかという疑問が生じてくる。(単に生産コストが安くあがるから?)それらは一体誰のコピーなのか、その点は重要ではないのだろうか。家庭用に販売されたクローンはどうなるのか(移植のときまで家庭で飼われるのか)。……など、次から次へ疑問がわいてくる。未来の物語ではあるけれど、「科学の進歩」では片付けられない問題を一杯抱えこんでいたように思う。

     他にも、クローンに喜びとか悲しみという一方的な感情のみを植え付けることは可能か(博士はリンと銀の接触を恐れていたが「人間」との接触は影響ないのか)とか、人造人間を「感情が出ないように作り直した」と言っていたが、手を加えなければ感情が芽生えてしまう人造人間は「人間」ではないのか、など、この話の重要なモチーフである「人間とは何か、それはどう定義されるか」に深く関わってくるところに、矛盾が多く含まれていたように思う。

     しかし現代の話題の「クローン」について、よく研究し、話し合って作り上げられた脚本であると思う。フリーダイアル、通信販売など現代の「物質社会」を風刺するような取り上げ方もおもしろかった。

    2.演技・演出について

     ある世界観があるというか、ひたむきないい演技をしていた。何か独特な感じがした。最初から最後まで緊張感が漂っていた。装置の動かし方などが工夫されていて、役者がのびのびと動いている印象を持った。

     場面が変わったとき、ダンスのようなパントマイムのような動きで始まる事が多かったが、見ていて、伝えたい事がよくわからなかった。(クローンたちの心象描写?)機械的で、単なる場つなぎのような印象になってしまっていた。最後にリンと銀が扉を開けたとき、赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのが、「誕生」という感じがしてドラマチックだった。

    3.照明・音響について

    照明……SF的なシャープな感じの照明で、雰囲気がよく伝わってきた。よかった。

    発泡スチロールに照明があたるといい感じがした。ラストの扉を開けるところの照明は

    見事だった。

     音響……場面ごとにテクノ系のかっこいい音、不思議な音がいっぱいあって、「未来社会」の雰囲気にとてもよくあっていた。水の音が良かった。ぞくぞくきた。最後の赤ん坊の泣き声もいいタイミングで出た。

    4.美術について

     発泡スチロールの装置は、照明の色でイメージが変わり、移動もスムーズ……と、効果的な面がありいいアイデアだと思ったが、素材がいかにも「発泡スチロール」のままだったので、もう少し工夫が欲しかった。(箱の型がついてる面は削るとか)

     クローン(リン、銀)のメイク・衣装が派手で、道化っぽい印象になっていた。「人間」と区別するために何か必要だったとは思うが、何か違うように感じた。

    5.全体を通して

     リンと銀の脱出という展開をドキドキして見られた。二人が逃げる場面でスローモーションの駈け足をするところなど雰囲気にあっていて良かった。個人個人の演技のテンションが高くて観客をひきつけていた。音響もストーリーにマッチしていて良かった。

     今、話題の「クローン」を扱った劇で、こんなふうにクローンが大量に販売される世の中になったら私たちはどうなるんだろう、クローンに頼る生活になるんだろうか、人はクローンにどんな感じを抱くんだろう、などいろんな事を考えさせてくれた。「クローンとは、人間?人の形をしたモノ?」という劇中の問いかけが心にジンときた。テルルの「クローンは、人間から生まれた人間」という台詞に「なるほど」と思うと同時に、未来社会でもみんながそう思ってそう言いきれたらいいなと思った。

     生徒たちが研究所に来て、クローンに感情移入していくくだりはもっと、掘り下げて描くべきだったのでは。それまで「モノ」扱いしていたのに唐突過ぎる感じがした。「かわいそう」で終わってしまっているところが物足りなかった。

    「仮想の未来社会」という物語の設定の仕方に多少違和感があったが(「脚本について」で前述)、形にならない部分を、なんらかの形にして伝えようとする、役者及びスタッフの個人個人のひたむきさが舞台に現われていて、1時間見せきってくれたというのが全体を通しての感想である。

     

    戻る

    以上です。長い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

     

    戻る


    府大会合評会(1)