2009講習会優秀作品

以下の2作品です。A4、5枚分です。お疲れ様でした。

 

◎最優秀作品 「セミ」

四天王寺高校 2年 玉井千咲さん

  公園。ス−ツ姿のくたびれた男がベンチに座っている。それを虫かごを持った少年が

  じっと見ている。

 

男    ・・・・。

少年   ・・・・。

男    ・・何。

少年   ・・・・。

男    ・・・何だよ。

 

  虫かごの中のセミが鳴く音。

 

男    うるさいんだけど。

少年   ・・・。

男    ・・何なんだよさっきから。・・いいよなお前は。

     そうやって虫とって毎日毎日あそんでりゃいいんだから。

少年   ・・・。  

男    何だよ。こっち見てないで、遊んでこいよ。滑り台でもジャングルジムでもブランコでも、

     色々あるだろ。楽しそうなやつがさあ。ほら、行ってこいよ。子供は好きだろそういうの。

     ・・何じろじろ見てんだよ、大人が公園にいるのがそんなに面白いかよ。

少年   ・・・。

男    ・・俺の遊具じゃ遊べないってか。 

少年   ・・・。

男    ・・いいよ、そうなんだろ。現にここにはお前以外子供は誰もいないんだから。

少年    ・・・。

男    何が遊具の危険性だよな。安全だろうが危険だろうが、みんな子供はク−ラ−の

     きいた部屋でゲ−ムしてんだろ。

少年   ・・・。

男    ・・もうあっち行ってくれよ。俺の顔ニュ−スで見たんだろうけどさ。

     そんなせめるみたいな目で俺を見るなよ。たくさんだ・・。

少年   ・・・。

男    ・・だから見るなよ・・。悪かったと思ってるよ。でも仕方ないだろ・・。家族を養って

     いかなきゃならないやつを何人も抱えてたんだ・・。

少年   ・・・。

男    ・・わからないだろうな、お前には。

少年    ・・・。

男    公園嫌いか?

少年   ・・・。

男    いるんだ、たまにそういう子供も。怖がってシ−ソ−に乗れなかったり、鉄棒ができなかったりで

     公園を嫌いな子がさ。

少年   ・・・。 

男    俺もそうだったんだ。っというより、俺の時代は公園っていうより、何っていうのかな。

     遊具も何にもなくて、広場みたいな感じでさ。あ、でも木が多かったな。空き地の周りに

     木がうわーっとあるような。運動苦手でさ、野球するってなっちゃうと、ひとりぼっちに

なっちゃって、へへ。

少年   ・・・。

男    そういう時は、ちょっと遠くの公園まで走るんだ。そこにはブランコがひとつだけあってさ、

     それで俺はあそんだんだ。

少年   ・・・。

男    でも、楽しかったな、子供のころは。野球は出来なかったけどさ、ブランコもなかなか好きだったし。

     俺、ブランコから大ジャンプできたんだぜ。

少年   ・・・。

男    毎日走りまわって、木に登って。お前みたいにセミとって。

少年   ・・・。

男    お前、この公園どう思う。

少年   ・・・。

男    ・・・子供は好きだろ。遊具。

少年   ・・・。

男    ・・木のぼりなんか、しないだろ。

少年   ・・・。

男    こんな楽しそうな公園、どこにあるんだよ。

少年   ・・・。

男    ・・・。

男    ・・走りまわれないか、これじゃ。

少年   ・・・。

男    ・・俺は間違っていないはずなのに。

 

    また、セミの音。

 

男    そのセミ、どこで採ったんだ。木もないし、ここらじゃ鳴き声も

     聞かないのに。

少年   ・・・。

男    ・・なあ。

少年   いたんだ。

男    え?

少年   いたんだよ、40年前には。

 

    セミの音。男にSS。男、うなだれる。

 

コメント

ぞくぞくして読みました。最後まで少年の正体にきづかせない工夫、男の語りの魅力、セミの音の効果、

・・設計がきっちりできているなあと思います。ただ一つ効いていないと思うのは遊具の扱い。

たとえばブランコ。安全のために取り外されているか、もしくはラストにSSの中に影として

浮かび上がるのか、プツンと切れて地面に落ちるか、・・もう一歩観客の理解を進める工夫がほしいですね。

 

 

 

 

 

◎優秀作品 「我輩は犬である」

 市立東高校2年 上山祐実さん

老女  もうお盆だねぇ、犬さんや。暑いかい?

犬男  ・・・・

老女  お前さんは、いつもほえたりせず、良い子だねえ。おっと、もうこんな時間かい。

    今日はもう帰るとしよう。

 

   老女、犬男の頭をなでて去る。

 

犬男  ・・帰ったか?・・たっく、俺はただの銅像なんだからしゃべるわけねえだろうが。

 

   そこに女がくる。

 

エリ  まだ来てない・・。もう!・・もしもし、タクくん?まだ来ないの?え、電車が遅れた?

    もう早く来てよね!

 

   エリ、その場で待つ。そこに老人(男)が近づいてくる。

 

エリ  タクくん!?なんだ、おじいさんか・・・。

老人  ・・・・

 

   老人、犬の周りを見回し、去っていく。

 

エリ  今のおじいさん、何だったのかしら。

タク  エリ!

エリ  タクくん!!もう遅いよぉ!!

 

   二人、仲良く去っていく。

 

犬男  んだよ、見せつけんなよな。何で俺が世のバカップルのための待ち合わせ場所に

    なんないといけねえんだよ。俺も彼女ほしいなあ・・とか思ってねえから!!

    俺は一匹狼!!ワン!!・・たまには、ナンパでもしにいくか。ちょっとぐらい

    待ち合わせ場所の位置がずれてもバレねえだろ。

 

   暗転。照明がつくと、犬が上手に移動している。そこに老女が来る。

 

老女  ふ−。夏の散歩はしんどいが、今日はいつもより、ここまでくるのが長く

    感じたよ。

犬男  ・・・。

 

   舞台下手。元々、犬がいた場所に昨日の老人がやってきて、あたりを見回し、

   その場に立ちつくす。

 

老女  今日も、まだじいさんはこないねえ。お馬さん、夏バテかのう。

犬男  ・・・。

 

   そこにタクはいってくる。

 

タク  あれ?いつも通り家出たのに、今日は早くついちゃったなあ。・・・

    おばあさん、」こんにちは。 

老女  はい、こんにちは。

タク  誰かを待っているんですか?

老女  ええ、じいさんをね。

タク  よいですねぇ。デ−ト。

老女  はいはい。お盆はラブラブですよぉ。

タク  お盆?

老女  お盆にじいさんは帰ってくるんですよ。

タク  ・・あ。すみません。

老女  いやいや。しかし、今年はまだこないんだよぉ、道に迷ったのかねえ。

タク  そのおじいさんとの待ち合わせ場所はこの犬の前なんですか?

老女  六十年前から、ずっと変わらんよ。

犬男  ・・・・。

タク  ずっと仲良しなんですね。

老女  ええ、はいはい。

 

   エリ、やってくる。

 

エリ  タク!!ごめん、何でかちょっと道に迷っちゃった。

タク  いや、まだ時間より少し早いよ。

エリ  あれ、タクいつも遅刻ぎりぎりだから、私、遅れたのかと思っちゃった。

    ・・・そちらは?

タク  君を待っている間、少ししゃべってていたおばあちゃんだよ。

老女  こんにちは。

エリ  こんにちは。

タク  それじゃあ、おばあさん。また会いましょう。

老女  はいはい。

 

   エリとタク去りながら

 

タク  六十年後もここで待ち合わせしようね。

エリ  何が?

 

   二人去る。

 

老女  ・・・じいさんや。もうそろそろおいでよ。

    せっかく一年ぶりなんじゃから。

 

   老女、少し待つが帰る。

 

犬男  ・・俺、場所移動したっていっても、公園内から出てねえぞ?まあ、でけえ公園だけど

    俺以外何もねえんだからちょっと向こうにじいさんが見えるじゃねえか。

 

   犬男、しばらく悩む。

 

犬男  ・・俺に彼女できなかったらお前らのせいだからな。

 

   暗転。犬男、下手へ。老人はずっと下手にいた。エリ、そこにやってくる。

 

エリ  タクくん、今日も遅刻か・・・

老人  ・・・

エリ  あ、昨日のおじいさん。今日も誰か・・・

タク  エリ!!

エリ  タクくん!!今日も遅刻!!

タク  いつも通り出たからね。

 

   二人去る。

 

老人  ・・・。

犬男  ・・・。

 

   そこの老女やってくる。

 

老女  今年はおそかったんですねえ。じいさん。

老人  ・・・ああ。

 

   二人手をつないで去る。

 

犬男  お−お−。どっちも見せつけてくれるぜ。

    ・・・あ−!!俺も彼女ほしいっ!!

 

コメント

 幽霊の老人だけが60年の歳月を経ても場所を間違えなかったというところに

 興味をひかれました。老人の存在感が大きいですね。