2008講習会優秀作品

以下の3作品です。3人でA4、7枚分です。お疲れ様でした。

 

『ラストシーンから始めよう』

                    柴島高校 3年  石田 千穂

    ・明転

     店内音楽が響く中、カゴを持った山田がデザート売り場のプリンと向かい合っている。

プリンには8月5日と文字。

山田    今日…やな。

プリン   そうね。

山田    明日じゃあかんのかな。

プリン   それはまずいでしょ?さぁ早くしてよ…。

山田    あんた…。

プリン   さぁ…早く。

    ・山田、プリンに手を伸ばす。しかし、やはり取る事が出来ず、倒れる。

山田    無理よ!!

プリン   山田!!

山田    だってまだ11時50分や?!まだあんたは生きられる。もう少し…あと少し…

    ・プリン、山田をはたく。

プリン   この意気地なし!!

山田    キャッ!!なっ何すんねん!!

プリン   私の…私の廃棄時間は12時よ。後10分の命なの!!

こんなプリン買うやつなんかいないんだから!!

山田    でも10分もあるやんか!!!!

プリン   10分しかないのよ!!

山田    後10分一緒に待とうや?

プリン   私…知ってるんだから!!

山田    …なっ何を?

プリン   10分前には…廃棄作業…終わらせないといけないんでしょ?

山田    どうしてその事を?!

プリン   84日のプリンに聞いたわ。

山田    じゃあその子は…。

プリン   ええ…

山田    昨日の勤務は…確か島井さん!!なんでこの子達にそんな事を…。

プリン   ううん。逆に知れたから今日私、とっても有意義に過ごせたのよ?

山田    8月5日のプリン…。

プリン   だからもう…終わりにしましょう?私は十分生きてきたわ。

山田    …っ!!

    ・山田、プリンに背を向ける。

プリン   山田。

山田    レジに登録するのよ。

プリン   …うん。

山田    廃棄するもののバーコードを読んでね、レシート出すの。買うときと同じ要領でね。

プリン   うん…。

山田    んで裏に持っていって…。

プリン   捨てられて、おだぶつって訳か。

山田    なんでうちのコンビニ、廃棄持って帰られへんねんやろな…。

おとなりのな、所はさ、持って帰らしてくれるらしいんやけど…。なんでよ。

プリン   当り前よ。命のつきた私たちを食べたらお腹をくだす可能性があるでしょ?仕方ないわ。

山田    くださんかもしれんやん!!てかうちあんたの為ならくだしても!!

    ・プリン、山田をはたく。

プリン   山田のバァカァー!!

山田    キャッ!!なっ何を…。

プリン   どうして自分を大切にしないの?もし貴方がお腹をくだして、バイトに出られなくなったら…。

どれだけの人が悲しむと思う?店長、マネージャー、鳥井さんその他沢山のスタッフ。皆が悲しむ。

山田    でも…。

プリン   常連さんは?あんたいつも10時にパンを買いに来るイケメンのお客さん。

会えるの楽しみにしてたじゃない。あの人に…会えないんだよ。

山田    …プリン。

プリン   何?

山田    ごめんな…。

プリン   …良いのよ。これも運命なんだから。

山田    …今まで。ありがとうな。

プリン   こっちこそ。ほらっもう55分よ。早く。

山田    …うん。

    ・山田、プリンをカゴに入れる。

     暗転。

     レジのスキャン、おつりの音。そして重い扉が閉まる音。

     すばやく明転。

     そこに山田が一人いる。どうやらレジにいるようだ。

山田    こんな感じで廃棄作業したら絶対おもろーやのになぁ…。あー客来−へんし。ヒマやなー。

    ・山田時計をみて。

山田    11時50分。さぁ廃棄、廃棄〜♪

    ・山田はけると暗転。

     コンビニのドアの音

        終わり

コメント

突飛な設定なんだけど、プリンの賞味期限が末期患者の余命に重なっているあたりが秀逸だと思います。

最後の楽屋オチに安易にいかず、もっとふくらましていく方がおもしろくなると思いました。

 

『夜のコンビニ』

                和泉高校 1年  奥田 奈央

 深夜1時半、香織がコンビニに入る。

香織   (ケータイでしゃべっている)

     だから言ってんでしょ!ATMは時間外手続きにお金いるかどうかきいてんのよっ!!

店員   (ドアホーンに反応している)

     いらっしゃいませーいらっしゃいませーいらっしゃいませー

いらっしゃ…げほ  っ

 コンビニの電話が鳴る。

店員   はいもしもし!!林田です!!どちらさまですか?!あっ間違えた。もしもし!こちら

コンビニです!

香織   (ケータイに向かって)

     何よさっきからっ。だから間違えたじゃすまされないのよぉ!!

店員   間違いっ?!はーい。

香織   何納得してるのよ。もういい。じゃあね。ATM、もうあきらめるわ…。

 香織、パンコーナーへ行く。

香織   クリームあんパン置いてないの?!もう、ついてないわー。

 またコンビニの電話が鳴る。

店員   もしもし!コンビニです!はい、はい、店長?!いません。今はいません。

なんちゃって。え、いや、でも、ねぇ?!

 

香織   くっだらない店ね、本当。きゃあ、嫌っジャムパンも無い!!メロンパンに、

クリームパンも?!どこにいったのよぉー

店員   行方不明ですってば!!俺も知りません!!

 店員、電話を切る。香織のケータイが鳴る。

香織   もしもし?あ…そうなの?ATM、お金かからない?本当?ATM

店員   アホのテンチョー、モウいらん…くすっ

 香織、ケータイを切る。ATMへ行って、操作をする。

香織   すいませーん。これってどうするんですかぁ?

 店員、話を聞いていない。

店員   ったく手間ばっかりとらせて…めんどくせえな…バカ店長(小声)

香織   ひどっ!!もういいです。帰ります。

 トビラの『ピンポーン』という音に反応して店員は「ありがとうございましたー」を

連呼する。

香織   二度と行かねぇ!

コメント

コミュニケ−ションの成り立たない世界を表現したかったの?

このワンシ−ンだけでは、評価しにくいけど、チクハクでイライラする不条理な世界に向き合おう

という作品に育つとおもしろいと思う。

 

『午前2時』

             四天王寺高校 1年  玉井 千咲

 夜のコンビニ。店員ケンと、客のユリちゃん。

ユリ    私、空を飛びたいの。

ケン    うん、それはわかったけど。ここでは羽根は売ってないんだよ。

ユリ    …どうして?

ケン    どうしてって…。だってここは、コンビ二だから。

ユリ    どうして?コンビニなのに?

ケン    えっ?

ユリ    コンビニは何でも揃ってるんでしょ?いつでも開いてて、お手軽に何でも

買えるんでしょ?

ケン    …まぁ、そうだけど。

ユリ    やっぱりそうなんじゃない!!ほらやっぱり先生の言う通り!先生が言って

たの!先生がそう言ってたの!

ケン    …先生?

 

ユリ    ええ、先生よ。先生って言っても学校の先生じゃないのよ。学校の先生と

思ったの?馬鹿ねーあなた。あの白い大きな建物があるでしょ?あそこに

先生がいるの。

ケン    ああ、先生ね。

ユリ    で、羽根は?羽根はどこ?

ケン    だからね、売ってないんだよ。

ユリ    どうしたら買えるの?ねぇ?ねぇ?

ケン    …面倒くさいなぁもう。いつか入荷するんじゃない?

ユリ    入荷?ここで売るようになる?

ケン    あーいつかね。

ユリ    私、急いでるのよ。

ケン    じゃあ仕方ないよ。帰ったら?

ユリ    …嫌よ。

ケン    え?

ユリ    にゅうかるすまでここで待ってるわ!

ケン    困るよそんなの!

ユリ    どうして?ここにはこーんなにおにぎりがあるじゃない!お腹なんか空か

ないわ。それに退屈したら本を読めばいいもの!…何これ。

女の人が服を着てない。

ケン    わーだめだよそれはだめ!とにかくここにいられちゃ困るんだよ。帰って

くれないと、先生に連絡するよ。

ユリ    絶対だめ!そんなの許さない!私が何のためにちゃんと寝たふりをして、

窓からパイプをつたって、あんなに怖い思いをしてここまで来たと思ってるのよ、

羽根があればひざだってすりむかなかったし、服だって汚れなかったし、

みんなに見つかる前に!早く早く早く!!

ケン    …どうしてそんなに空を飛びたいの?

ユリ    だって…。…あなたは飛びたくないの?

ケン    いや僕は…

ユリ    あなたは空を飛びたくないの?

ケン    …そりゃ僕だって、そりゃ僕だって、鳥みたいに飛べたらなって思うよ。

あんな風に、自由にすいすい飛べたらなって。こんな、時給が良いからって理由で

夜のコンビニで働いて、昼はずっと寝てるような生活……って、何してるの?

ユリ    おにぎり。

 ユリが勝手におにぎりを食べている。

 

ケン    何勝手に食べてるんだよー!!!これは商品なんだから食べちゃだめなんだよー…。

あぁーもう3個も食べちゃって…

ユリ    お腹が空いたんだもの。

ケン    知らないよそんなの。

ユリ    あなたは何になりたいの?

ケン    ん?

ユリ    私は鳥になりたいの。鳥になって、あの建物から抜け出すの。私のことみんな病気だって言うの。

私は病気なんかはないのよ。ほら、ちゃんと歩ける。ちゃんと走れる!

…でもみんなわかってくれないの。だからあそこを出るの。

ケン    ……。…僕はさ、飛行機技士になりたかったんだよ。

ユリ    なぁにそれ。

ケン    飛行機を作る人。

ユリ    羽根じゃないの?

ケン    羽根は違うよ。でも空は飛べるよ。

ユリ    どうしてやめちゃったの?

ケン    僕みたいな貧乏な家の子は良い学校にも塾にも行けなかったんだよ。

ユリ    だからやめちゃうの?

ケン    …うん。

ユリ    お金なんかなくたって平気よ。私だってないんだから。

ケン    ちょ、君、羽根買おうとしてたじゃないか!

ユリ    ええ。でもお金がないもの。羽根を手に入れたら、飛んで逃げればいいのよ。

ケン    それは…

ユリ    何のために働いてるの?働いたらお金がもらえるんでしょ?

それ使って学校行けばいいじゃない。どうして何もしようとしないの?

ケン    ……。

 ユリちゃんを探す何人かの声。

ユリ    あなたが早く羽根を売ってくれないから!!

ケン    …うん、ごめん。

ユリ    ……。

ケン    僕、もう1回頑張ってみるから。勉強して飛行機技士なるから。

ユリ    飛行機、つくるの?

ケン    うん。つくる。僕の設計した飛行機が出来たら迎えに行くから。

それに乗って、空を飛べばいいよ。

ユリ    羽根は?

ケン    飛行機にも羽根はついてるよ。

ユリ    …飛行機、のせてね。

ケン    うん。

 コンビニを出ようとするユリ

ケン    あ、待って。これ…

ユリ    バンドエイド?

ケン    ひざ、すりむいてるでしょ?

ユリ    …さすがコンビニだね。

ケン    うん。

ユリ    ありがと。

 コンビニを出るユリ。いつも通り働くケン。

コメント

あの白い大きな建物の先生というセリフで話がみえてしまうのが残念。

なんでもそろっているコンビニという設定がうまくいかされていると思います。

特に最後のバンドエイドがいいですね。

裸の女の人の本を見てしまうのもコンビニが生かされています。

女の子のセリフが説教じみたものにならないように、ケンが簡単に思い直したり

しないようにすることが大事と思います。そんなに安易に立ち直ったりしないはずです。

少しだけ元気をもらう感じ?