題:虫 東住吉高校2年 中谷 萌さん
(男の子が一人、扇風機の前に座っている。紙をちぎってまわるプロペラの中へ入れる。
何度も何度も同じことのくり返し、父入ってくる。)
父 けん太。けんボ〜!何しとんねん。
けん太 お父ちゃん、僕聞いてんけどな。
父 あぶないやんけそんなことしっとたら。
けん太 なぁお父ちゃん。
父 何や。
けん太 僕な。
父 おい!!この紙・・・わしの書類やんけっ。
けん太 お父ちゃん。
父 わしの書類。
けん太 僕なぁお父ちゃん。
父 けん太!!お父ちゃんの書類!!けん太悪いことしたらなんて言わなあかん?
けん太 ごめんお父ちゃん。
父 わかったらええんや。わかったらな。
けん太 あんなお父ちゃん。
父 おぅ。
けん太 僕聞いてんけどな。
父 おぅ。
けん太 僕の口ん中に虫おんねんて。
父 虫?
けん太 何か小っちゃくてな、まるいヤツ。
父 あ?・・・あぁ、ほんなら歯医者さんに行かななぁ。
けん太 何で?
父 何でてそら、そのままにしとったらイタタになんで?
けん太 イタタ?
父 そのまんまにしとったらなぁ、虫さん大きなってまうんや。
けん太 虫、大きなってほしい!
父 何でぇ。
けん太 口開けたら虫逃げてまうもん。
父 すでに口開けてしゃべっとるやんけ。
けん太 いややいやや。
父 あんなぁけんボ〜よぉ聞けよ。その虫はなぁわるいやっちゃでぇ?
ものすごわるいやっちゃ。
けん太 ええもんやもん!
父 何でわかるん。
けん太 生きもんにわるいもんなんておらん!
父 けん太。そんなこと誰に教えてもろたん。
けん太 おっちゃん。
父 どこの。
けん太 学校の帰りにいつもおるおっちゃん。
父 それ確実あやしいなぁ。もぉ近づいたあかんで。
けん太 僕の虫、ちょうちょになる?
父 さぁなぁ、わからんわ。
けん太 ちょうちょになったらええなぁ。
父 けんボ〜、ホンマに口ん中に何かおるんか?
けん太 虫いてる。
父 ・・・・・ちょおホンマに口開けてみッ!
けん太 いやや
(セミの声、父、扇風機をとめる。)
父 お母ちゃん!
けん太 お母ちゃん買いもん行ってる。
(父、扇風機をつける。けん太、扇風機に顔を近づけ「あ〜〜〜〜」と言う。)
父 おっ。
(父、けん太の口を見ようとする。)
けん太 なぁお父ちゃん。
父 お、何や。
けん太 口開けて?
父 お、よっしゃ。(開ける)
けん太 おった。
父 おった!?何がや。
けん太 ウソ。
父 ウソ!
けん太 その書類。お父ちゃんのちゃうで。
父 え。
けん太 お母ちゃんの。
父 あ、ホンマやお母ちゃんの名前かいてある。
けん太 朝書いてた。ほんでどっか言ってもぉた。
父 買いもんやろ?
けん太 ・・・・。
(けん太、扇風機に顔を近づけ「あ〜〜〜〜」と言う。
父も並んで「あ〜〜〜〜」と言う。)
コメント
独自の雰囲気があって、楽しい作品ですね。
この場だけをふくらませるとすれば、けん太の口を
開かせるのにもうひと勝負させるのもよいでしょうか。
おかあさん、離婚届書いてたりしてることとか、
怪しいおっちゃんとか、これからの展開を想像させるし、
人物像が浮かんできて、秀逸な出だしと思います。味がある。